日本海水学会誌
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分子積層法によるナノスケールレベルの欠陥がない逆浸透膜の開発
鈴木 祐麻岡村 正樹濱野 大輔新苗 正和
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2019 年 73 巻 4 号 p. 229-236

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抄録

界面重縮合反応により作製された既存のポリアミド複合逆浸透膜(RO膜)の欠点の一つとして,ポリアミド活性層に存在するナノスケールレベルの欠陥を通って溶質がRO膜を透過することが指摘されている.そこで本研究では,分子積層法でポリアミド活性層を形成することにより,ナノスケールレベルの欠陥がないRO膜の開発を試みた.まず,支持膜として用いるポリアクリロニトリル(PAN)膜の最適化を行うために,NaOHの濃度がシアノ基の加水分解に与える影響を調べた.その結果,NaOHの濃度を1 mol/Lから2 mol/Lに増加することにより,より多くのシアノ基がカルボキシ基へと加水分解された.また,加水分解の際に裏面から0.3 MPaの圧力をかけることでPAN膜の表面のみを加水分解することができ,加水分解に伴う支持膜の水透過性の低下を抑制することができた.次に,最適化された支持膜を用いて作製したRO膜の性能評価を行った.分子積層法で作製したRO膜は積層回数を15回以上とすることにより本研究で対象とした市販RO膜より高い塩分除去率を示したが,水透過性は市販RO膜より低かった.また,ろ過実験で得られた実験結果を溶解/拡散-移流モデルを用いてモデリングした結果,本研究で対象とした市販RO膜はナノスケールレベルの欠陥が存在するのに対して,積層回数を15回以上としたRO膜はナノスケールレベルの欠陥が少ないことが分かった.

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© 2019 日本海水学会
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