日本海水学会誌
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報文
蒸気拡散式多重効用海水蒸発濃縮器の性能
-改良を施された45°傾斜の拡散距離5 mm,5段効用濃縮器-
野底 武浩石川 正明水口 尚儀間 悟笠原 友宏
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2019 年 73 巻 5 号 p. 292-299

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抄録
加熱面(第一平板)を下方にして,水平から45°傾斜させた,実用器に近い寸法の蒸気拡散式5段効用海水蒸発濃縮器を製作し,性能試験を行った.第一平板の下面の1 m×1.6 mの面積は蒸気加熱され,その下流の0.52 m長さの領域は断熱されている.各平板の上面には,両面テープを用いて蒸発ウィックが貼り付けられており,各平板間の蒸気拡散距離は5 mmである.各蒸発ウィックを流下する海水は,樋により中央一箇所に集められて流出する.解析モデルに基づく理論値を用いて試験結果を評価した.得られた知見は次のようにまとめられる.①両面テープを用いた接着によって,親水性の低下を抑制しつつ,蒸発ウィックと平板の間における空気泡の形成を防止できた.②濃縮器内部の蒸発ウィックにおける蒸発量は,実験値が理論値より常に少なかった.③第一平板温度の上昇とともに,総蒸発量はほぼ直線的に増加した.第一平板温度75~96 ℃において,総蒸発量の測定値は2.4~5.8 g/sであり,理論値より平均して12 %低かった.④蒸発倍数は,第一平板温度の変化に対し顕著な変化は示さなかった.その測定値は2.7~3.5であり,平均して理論値より13 %低かった.
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© 2019 日本海水学会
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