日本海水学会誌
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電子線グラフト重合法によるイオン交換膜の開発
-ポリエチレンフィルムに含有される酸化防止剤の影響-
佐々木 貴明永谷 剛田柳 順一
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2020 年 74 巻 4 号 p. 233-240

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抄録
ポリエチレンフィルムに含有される酸化防止剤が電子線グラフト重合に及ぼす影響について評価した.ポリエチレンフィルムには,超高分子量ポリエチレン(UHMWPE),高密度ポリエチレン(HDPE),低密度ポリエチレン(LDPE),およびLDPE含有HDPEの4種類を選定した.これらのポリエチレンフィルムに含有される酸化防止剤を抽出し,同定および定量した.UHMWPEにはIrgafos168のみが含有されていた.HDPEおよびLDPEには,BHT,Irgafos168,およびIrganox1076が含有されていた.LDPE含有HDPEにはBHT,Irgafos168,Irganox1076,およびSUMILIZER GP の4種類の酸化防止剤が含有されていた.これらの酸化防止剤を添加した重合用モノマー溶液を用いてグラフト重合した.フェノール系酸化防止剤であるBHT,Irganox1076,およびSUMILIZER GPを添加した重合用モノマー溶液を用いたとき,添加濃度の増加にともないグラフト率は低下した.ポリエチレンフィルム中の酸化防止剤について,電子線照射前後の挙動を評価するとともに,電子線照射後の酸化防止剤分解残渣についてラジカル捕捉機能を評価した.LDPE含有HDPE中のBHT,Irgafos168,Irganox1076,およびSUMILIZER GPは電子線照射量の増加にともない低減する傾向を示し,BHTおよびIrganox1076は100 kGy以上で10 %以下まで低減した.また,Irgafos168およびSUMILIZER GPは60 kGy以上で1 %以下に低減した.電子線を照射したLDPE含有HDPEより溶出させた酸化防止剤分解残渣を含む重合用モノマー溶液を用いてグラフト重合した結果,酸化防止剤分解残渣のラジカル捕捉機能は消失していることが明らかになった.
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