日本海水学会誌
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イオン交換膜法製塩母液の温度,濃縮度がオーステナイト系ステンレス鋼, ニッケル合金の孔食電位に与える影響
中島 聖珠中原 憬中村 彰夫正岡 功士
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2023 年 77 巻 3 号 p. 130-139

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抄録

イオン交換膜法製塩の蒸発缶内で想定される母液条件において,UNS S31600,S31254,S32053,N08354,およびN06022 の孔食電位を測定した.S31600,S31254,S32053,N08354 では,孔食が発生した試験条件と孔食が発生せず主に水の分解反応(酸素ガスの発生反応)が生じた試験条件とに大別された.酸素ガスの発生電位は製塩母液の温度,濃縮度,および金属種による影響を受けないが,孔食電位は影響を受けることが示唆された.取得したデータを用いて,孔食発生の臨界濃縮度,孔食電位を目的変数,製塩母液の温度,濃縮度および金属材料の孔食指数を説明変数とした実験式を作成した.一方,N06022 では,検討範囲においては孔食が発生せず過不働態溶解が発生した.過不働態溶解電位は製塩母液の温度,濃縮度による影響を受けることが示唆された.そこで,製塩母液の温度,濃縮度を説明変数とし,過不働態溶解電位を目的変数とした実験式を作成した.これらの実験式は,イオン交換膜法製塩母液における孔食発生の臨界濃縮度,孔食電位を予測でき,イオン交換膜法における蒸発缶の金属材料の選定に活用できる.

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© 2023 日本海水学会
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