日本海水学会誌
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元素マッピングによるサメの脊椎骨に取り込まれたバリウムの評価
土屋 光太郎根本 雅生風間 仁美田中 美穂
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2024 年 78 巻 1 号 p. 44-51

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抄録
サメ類の脊椎骨において,元素分布と位置情報を兼ね合わせた報告はあまりない.サメ類の入手が難しいことと,サメ類が大きいため,船上に引き揚げて処理する必要があり,商業ベースで有用種であることも挙げられる.カルシウム,ストロンチウムの他にマンガンとバリウムの濃度が得られている.本報告では,日本近海に多く生息するヨシキリザメの脊椎骨の元素分布をLA/ICP-MS を用いて測定した.その結果,既報されているカリフォルニア沿岸域に生息するアオザメの脊椎骨の元素分布とよく一致した.バリウムの供給はカリフォルニア湾の湧昇流であると示唆されている報告もあるが,本研究海域では,湧昇流はあまりみられない.アルカリ土類金属であるCa,Srと類似しているBa は生体内に分別されず取り込まれるが,毒性を有するため,生体器官の中に貯められるよりは,比較的Ba の毒性の影響の少ない脊椎骨に蓄えられるのではないかと考えた.
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