抄録
マグネシウム, カルシウムの迅速分析法としてEDTA法を使用する時, 海水, かん水中のマグネシウムを水酸化物として除去した試料について当面する問題であるが, カルシウムが40mg/100ml程度存在しマグネシウムが微量となつてくると相当大きな誤差が入つてくる. この誤差の原因および大きさ, この誤差を消す手段を求めることを目的として, 誤差に関係するマグネシウムとカルシウムの量的相互関係, ナトリウム, 人の差の影響, 標定についての基本的事項について検討した. なおEDTA法ではマグネシウムが微量のときでもマグネシウムとカルシウムの合量からカルシウム量を引いてマグネシウムを求めるが, これを避けるため微量マグネシウムの直接定量法としてチタンイエローによる比色法も検討した. 誤差の内容として精度はよいが, 偏りが主なものとなるので, 標定については特に注意し, マグネシウムとカルシウムの両者で行うことが望ましく, 常に一定量の指示薬を使用する方がよいと考えられる. マグネシウムの量が10mg/100ml以下の時EBTによるマグネシウム定量の誤差は2.5g/100ml程度の塩化ナトリウムによつて+2%, 40mg/100ml位のカルシウムによつてこれはカルシウム自体が少なく現れることに基因するものであり-2%以上の値となるが, ナトリウムとカルシウムが共存するときはカルシウムの効果が大きく現れる. 20mg/100mlのマグネシウムを共存させることによつてこの誤差を消滅させることができ, 普通のマグネシウム量の場合には大体±0.5%の誤差範囲でEDTA法を実用し得ると考える. ムレキサイドによるカルシウムの定量については終点の判定に注意を要し, 今後カルシウムの直接定量について考える必要がある. 微量マグネシウムの直接定量法としてのチタンイエロー法はカルシウムの影響を常にカルシウムの500ppmを添加して一定にすることによつて4ppmまでLambert-Beerの法則が成立し実用し得ることを見いだした.