日本海水学会誌
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海水中のウラン採取に関する基礎研究
尾方 昇
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1971 年 24 巻 5 号 p. 197-212

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抄録
海水中のウランの分離および定量法について種々の改良を行ない, 次に海水ウラン採取の種々な方法を検討し, その中でもつとも効果的な方法の一つとしてチタン酸を用いる吸着法を中心にして研究した.海水中のウランの化学種を, Na+, K+, Ca2+, Mg2+, Cl-, SO42-, F-, PO43, HPO42-, CO32-, OH-およびUO22+の安定度定数から求め, その大部分はであることを見出した.チタン酸による吸着機構は陰イオン吸着反応であると予測された.チタン酸によるウランの吸着は, チタン酸の種類, 海水温度, 接触海水量, 海水中のウラン濃度によつてほぼ決定される.チタン酸の調製には, 均一な酸性溶液中で調製されたチタン酸では吸着量が大きい.高温海水ではウラン吸着量は著しく増加するので, 原料海水は暖い海水が望ましい。最大吸着容量は分布係数とウラン濃度の積で求められる.実験的に得たチタン酸中のウラン吸着量の最高値はU/Ti=1550μg/gであり, 最高の吸着容量推定値はU/Ti=4200μg/gであつた.チタン酸からウランの脱着には塩酸を用いる方法がもつとも欠点がないと考えられる.最後に今後の課題を若干提起した.
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