抄録
イオン交換膜にがりを処理するための基礎資料をえるうえにおいて, 塩化カリウムと塩化カルシウムから成る複塩について明かにすることは重要であるが, LightfootらとAssarssonは別々に平衡系KCl-CaCl2-H2Oについて研究し, Lightfootらは, 化学式が2KCl・CaCl2・2H2Oの複塩が, また, AssarsonはKCl・CaCl2の複塩が存在すると報告している. しかし, 両者の報告を検討したところ,(1) 50℃ と90℃ でKCl・CaCl2が存在し, 中間の75℃ で2KCl・CaCl2・2H2Oが存在することになる.(2) しかも, 両者の報告に, それぞれの複塩を液底体とした95℃ の平衡値が記載されている, など矛盾しているため, 残留法, X線回折などにより追試した結果. 塩化カリウムと塩化カルシウムから成る複塩はKCl・CaCl2のみ存在し, 2KCl・CaCl2・2H2Oは存在しないことを確認した.