抄録
無機イオン交換体による海水, かん水中のカリウムの採取を目的として, 交換体製造時の配合率を変えた場合の物性, 構造 (X線回折図) およびイオン選択吸着性などへの影響をしらべた.
試料には, 縮合リン酸ジルコニウムとして, トリポリリン酸ジルコニウム, ピロリン酸ジルコニウム, トリメタリン酸ジルコニウム, およびヘキサメタリン酸ジルコニウムを, またヘテロポリ酸のジルコニウム塩としてリン酸とタングステン酸のジルコニウム塩およびリン酸とモリブデン酸のジルコニウム塩などを使用した.
1) 製造時のジルコニウムに対するリン酸, 縮合リン酸あるいはヘテロポリ酸などのP成分の配合率が増加するとともに非晶質な交換体から次第に結晶化度の進んだ交換体に変わる.それに伴なつてイオン選択吸着性もまた変化する.
2) 製造時の配合率によつてイオン交換反応に異なる二つの反応型があることを見出した.
その一つは, 交換体相に吸着する成分をmg/gで表示した場合に, そのNa+量がK+量のほぼ2~3倍にも達し, しかも2価イオン量が極端に少なく, 吸着量の大小の順序がNa+>K+>Mg2+~Ca2+であるような交換体である.
それに対し, 吸着量がK+>Na+>Mg2+~Ca2+のような順序で, 2価イオンの吸着量が前者にくらべてかなり大きい交換体とに分類することができる.
3) イオン選択性を支配する要因として交換体の見かけ容積v'があり, v'が1cm3/g付近を境にして選択性が変ることを明らかにした.これは前報で10種類の交換体について試験条件を変えて行なつた試験結果 (見かけ容積とイオン選択性の関係) ともよく一致した.