日本海水学会誌
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クエン酸鉄アンモニウム (FAC) の組成と固結防止効果
塩の固結防止に関する研究 (第10報)
米井 祥男増沢 力
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1973 年 26 巻 5 号 p. 265-272

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抄録
市販のFACおよび調製した鉄とアンモニア含量の異なるFACについて, その水溶液の色相, 添加塩の白色度, 塩化ナトリウムに対する媒晶作用, 固結防止効果などの性質を検討した. また市販FACの活性炭処理による脱色効果, 固結防止効果などについてもあわせて検討し, つぎの結果を得た.
1. FAC水溶液の色相はpHによって変化し, pHがアルカリ側へいくにしたがい黄緑色から茶褐色になった. なお520mμ における吸光度はpH5で最低になった.
2. 520mμ における吸光度の大きいFAC水溶液ほど添加塩の白色度 (ΔR) は大きく, したがって着色してきた.
3. 市販FAC水溶液を活性炭で処理すると, 色相は褐色から黄緑色に変化し, 520mμにおける吸光度は小さくなるが, これを食塩に20~100ppm添加した場合, 白色度 (ΔR) は未処理のFAC添加塩に比して大差がなかった. しかし固結防止効果の小さいFACは, 活性炭処理によりFACのpHが上昇し, 固結防止効果も大きくなった.
4. FAC水溶液のpHを8.5~9まで高めて塩化ナトリウム水溶液に添加して自然乾燥すると, 媒晶作用による固結防止剤の特徴を示す塩化ナトリウムの微結晶を晶出した. この微結晶を走査型電子顕微鏡で観察すると, フェロシアン化カリウムによる塩化ナトリウム微結晶とは形状, 大きさなどの差異が見られた.
5. FAC水溶液のpHがアルカリ側へいくほど, 固結防止効果は高くなったが, 逆にFAC水溶液の520mμにおける吸光度が大きくなり, 添加塩の白色度 (ΔR) も大きくなり着色してきた.
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