日本海水学会誌
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液体窒素直接接触冷凍法による塩水淡水化に関する研究
大矢 晴彦坂西 良一庄司 敏博鶴岡 義典高橋 統根岸 洋一
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1979 年 32 巻 6 号 p. 301-309

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抄録
1) LNGを用いた直接冷凍法によるかん水の淡水化においては, LNGのハイドレート形成の有無が重要となる.もしハイドレートが形成される場合には, これの熱分解に基づく圧力の急上昇が装置の安全性の点から問題となる. MarshallらやKnoxらの研究によるとLNGの主成分メタン, プロパン等のハイドレート形成条件は, 氷ができる状態ではおのおの30tam, 2~3atmくらいであつて, 常圧操作の場合とくに問題とならないことが判明した.
2) 晶析槽に安定して供給できる液体窒素の最大許容冷媒流量は, 晶析槽表面近傍に設置された攪拌翼の浸漬深さおよび攪拌速度によって規定されることが判明した. 攪拌動力Pvが0.15 [g/cm2・sec] 以上では最大許容冷媒流量は飛躍的に増大する.
3) 生成した氷結晶の平均径は300μm以下であった, 冷媒投入量を増大させると, 一度最大値をとった後, 減少する. 攪拌NRe数に対しても同様の傾向が存在する.
4) 結晶成長速度は, 冷媒投入量を増大させると一度最大値をとった後減少する. 攪拌NRe数に対しても同様の傾向が存在する.
5) 生成した氷結晶の固定粒子層をもちいて洗浄実験を行ない, 氷結晶とほぼ同量の水で洗浄すれば, 飲料水が得られることが判明した. また洗浄過程における残余濃度曲線は川崎らの結果とほぼ等しい結果を得た.
6) 川崎らの定義によるEL'=4.73×10-3を得た. したがって洗浄水流れはピストン流に近く, 従来の向流式洗浄方式に関する知見より考え, 数%の淡水損失で塩分濃度500ppm以下の淡水が得られる可能性があることがわかった.
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