日本海水学会誌
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ポリアミドクラウン樹脂によるカリウムとナトリウムの分離
井川 学田中 正雄阿部 勇輝山口 益夫山辺 武郎
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1980 年 33 巻 6 号 p. 331-336

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抄録

クラウンエーテルのポリマーであるポリアミドクラウン樹脂によるカリウムとナトリウムの分離について検討した. この樹脂の吸着量は低濃度では小さいが, 濃度の0.63乗で吸着量は増加する. 吸着量に影響する因子としては, 塩濃度のほかに組成, 温度, 対イオン, 酸の影響等があり, 高温になるほど吸着量は減少し, 対イオンの種類によって吸着量は大きく異なる. また, 酸の影響は酸の種類によって, 吸着量が増加するもの (HCl, HNO3) と減少するもの (H3PO4, CH3COOH) があり, このことからとくにリン酸により樹脂を洗浄すると効果があるだろうことがわかった. カラム法によるろう出曲線をとったところ, 流速を小さくするとカリウムとナトリウムの分離は良好であり, 人工海水を用いた実験でも分離能の変化は見られなかった. カラムの再生のためのイオンの脱離の試験では, これまで温度を上げて洗浄すると効果があるといわれていたが, リン酸洗浄も効果があることがわかった.
この実験の結果より, 海水あるいはかん水中のカリウムとナトリウムを, ポリアミドクラウン樹脂を充てん剤としたカラム法により分離することが可能であることが示唆される.

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