日本海水学会誌
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蒸発式海水淡水化装置で生成するアルカリスケールの熱的特性
和泉 健吉山田 章
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1982 年 35 巻 6 号 p. 355-360

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抄録
蒸発式海水淡水化装置の伝熱管に析出するアルカリスケールの熱特性を実験的に検討した.
アルカリスケールは炭酸カルシウムと水酸化マグネシウムの混合物質であり, その混合比は析出温度によって異なり, 低温部では炭酸カルシウムが主成分, 高温部では水酸化マグネシウムが主成分である. 混合組成のスケールの密度が単一組成のスケールの密度より小さくなる実験結果が得られた. このことは混合組成のスケールには内部に空隙が多いことを意味している. 混合比0.55近傍の空隙率が最も大きく40%に達するが, これは均一球の最疎充填に対する空隙率に近い値となる.
スケールの熱抵抗を炭酸カルシウム, 水酸化マグネシウムおよび空隙の熱抵抗の直列接続と仮定して計算すると, 空隙の熱伝導度が0.63W/m・Kになる. これは水の熱伝導度にほぼ等しく, スケールの熱抵抗の測定を水中で実施した点と考え合わせると, 混合組成を有するスケールの構造として, 単一組成のスケール粒子が疎に充填されているというモデルに妥当性がある.
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