日本海水学会誌
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イオン苦汁処理工場の運転方式
坂本 佳六
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1984 年 38 巻 2 号 p. 84-110

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抄録

イオン製塩苦汁の処理に当たって, イオン苦汁が塩化カリに富んだものであること, またイオン製塩工場で多量の粗製の塩化カリが回収されていることの好条件に恵まれて, 硫酸カリ製造の好機が訪れてきた. 旧塩田時代に開発したところの硫酸カリ製造操作の復活である. イオン苦汁より, 硫酸カリを製造することにより, 二次的に脱カル苦汁の増収をはかった. この脱カル苦汁を真空蒸発缶にて濃縮して, 塩化カリ塩の収, 塩化マグネシウム製造の母体である濃厚苦汁を増産する方式を確立した.硫酸カリ製造装置と蒸発缶装置との組合せ, 緊密なる連繋操作系統について述べた. 本論の最重要点は硫酸カリ製造方法の実際操作と, その根基となる相律的解析である, 使用原料の品位の高い塩化カリの場合は, 従来採用されなかった直接法硫酸カリの製造が, 配合割合の改良によって, 容易にできうることについて述べた. また品位の劣るKCl 60%以下の塩化カリから硫酸カリを製造する方法について, 特殊高度kalimagnesiaを製して, 二段反応法により, 高度の品位の硫酸カリを製造する方法について詳述した. 石膏の製造, 臭素の製造, 塩化マグネシウム等の製法については, 旧塩田時代との比較を行った.
脱カル苦汁の濃縮カリ塩類の採取, 濃厚苦汁の採取工程については, その濃縮機構の相律的解析を行った. 真空蒸発缶装置を駆使する方法が燃料経済上最も有利であるとともに, 各製品製造の原単位成績の向上に役立つものである.
本運転方式によると, 副原料として, 水酸化マグネシウム, 硫酸, 粗製塩化カリを, 自家苦汁処理に外部より供給を受けるのであるが, 原料苦汁1kl当り, 臭素8kg, 石膏100kg, カリ塩類248kg, 硫酸カリ45kg, 塩化マグネシウム製品450kgを製造することができる.
首題の苦汁処理工場の運転方式については, 各社, 各工場それぞれの特質があり, 立地条件, 製品製造技術の伝統, 製品の販売営業ルート, 製造装置の規模, 種類等において差異があるため, 画一的な製造運転方式などはありえない.
本論においては, 著者の工場の運転方式のみについて述べたにすぎない. この運転方式の特徴は, 硫酸カリ製造の工程を総合苦汁処理工程中に統合した点である. これがカリ塩塩化マグネシウム製造の化学的操作サイクルを完全なものとしたのである.
本論の硫酸カリ製造およびその解析にあたって, 本学会名誉会員岡俊平先生のご業績の資料から多数転載引用させていただきました. ここに深甚の謝意を捧げます. また同研究関係の門田稔教授, 真島久之助教授, 本山正夫教授各位の関連ご業績に対し, 心からなる敬意を表させていただきます. 20年間にわたる長期間に研究の自由と経済的支援を与えられた仁尾興産株式会社に厚くお礼を申し上げる次第でございます.

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