抄録
蒸発法による海水淡水化において, 原料海水がアンモニアで汚染されている場合, 生成淡水中にアンモニアの一部が混入し, その水質を損う. 混入の割合は気液平衡によって決まるが, これには水相におけるアンモニアの化学平衡を考慮しなければならない.
著者らは, この化学平衡を考慮したアンモニア-塩水系の気液平衡式を導いた. そして, この式を用いてアンモニアの挙動を予測するために, 海水淡水化蒸発装置の操作条件にみあう温度, 塩分濃度に対して, pHを変えて気液平衡値を求め, 考察を加えた.
その結果, 化学平衡を考慮することにより, 温度, pH, 塩分濃度の気液平衡に対する影響が明らかになり, この式を用いれば, 海水淡水化蒸発装置内でのアンモニアの挙動を正確に知ることができることがわかった. また, この結果から, アンモニアと同様に, 水相でイオンや錯体を生成する物質の気液平衡を求める場合には, 化学平衡を考慮しなければならないこと, その場合式 (12) をその物質にみあって修正するだけで, この式はそのまま適用できることを明らかにした.