抄録
多段フラッシュ蒸発式海水淡水化プラントにおいて, アルカリスケールの析出に関連する炭酸物質の循環ブライン中での物質収支を計算し, 造水量100m3/d, 10段フラッシュ蒸発プラントを用いたpHコントロール法に関する実験の実験データと比較検討し, 以下の結論を得た.
(1) ブライン中の炭酸物質の物質収支は炭酸物質の解離平衡の過渡状態を基本に置いて計算できる.
(2) 多段フラッシュ蒸発プラントでは, ブラインは各蒸発段の凝縮器およびブラインヒータの伝熱管内と一連のフラッシュ室を順次循環している. このブライン中の炭酸物質の物質収支計算には, 熱管内ではスケール析出をフラッシュ室では脱炭酸とスケール析出を考慮すればよい.
(3) フラッシュ室でのブライン流れについて, フラッシュ蒸発域と滞留域の二つの領域に分けるモデルが得られた. 脱炭酸はフラッシュ蒸発時に速く進み, 滞留時には遅くなり, スケール析出は滞留時に起きるという考え方が適当である