抄録
多段フラッシュ蒸発式海水淡水化装置において, 蒸発器の伝熱管に沈着するスラッジの生成機構について検討した. スラッジの主成分は有機物と鉄化合物であり, 前者は海水中の懸濁物後者は蒸発器缶体の腐食生成物と考えられる. そこで鉄化合物の酸化に伴う形態変化に関して基礎実験を進めるとともに, 実際の海水で長時間にわたる造水運転を行った100m3/dおよび2,000m3/dプラントで採取したスラッジの化学分析を実施し, 両者を比較検討した.
その結果, 腐食生成物の水酸化第一鉄Fe (OH) 2を溶存酸素により酸化したときの最終的な鉄化合物の形態は, 高温部で四三酸化鉄Fe304, 低温部でオキシ水酸化鉄γ-FeOOHとなり, 両者の温度領域は鉄濃度と溶存酸素濃度の比によって変化することがわかった. すなわち鉄濃度と溶存酸素濃度の比が小さな場合にはオキシ水酸化鉄の生成範囲が高温側に拡がり, 四三酸化鉄の生成はごく高温部に限定される.