抄録
1) 従来からの沿岸海況解析は, 塩分と水温から行われていたが, Park (1967) は溶存酸素と栄養塩含有量から水塊分析の基本的考え方をのべた. 筆者はParkの基本的考え方が, 伊勢湾の各海域において成り立つものかを検討した. その結果, 伊勢湾の各海域の栄養塩類濃度は, 酸素利用度との関係によってある程度推定が可能であることがわかった.
2) 各海域の栄養塩類の実測値の違いは, 主として保存性濃度によって生じているものと思われる.
3) 伊勢湾では. しばしぼ生じるプランクトン異常生産のために期待値以上に, 窒素が消費されている. また, リンに比較して窒素の再生が大きい.
4) 表層水では, 塩分量27~30‰を境にして湾口海域と湾奥海域との違いが, おおよそ分類できる. 底層水では距岸5km沖合で水深10m前後を境にして沖合海域と港内および河口海域との違いが, おおよそ分類できる. これらの現象は河川水および都市排水の影響と光合成活動の程度に起因するものと思われる.
5) 伊勢湾海域の水質は, 一定の規則に支配されていることが明らかとなったが, 東京湾・瀬戸内海など各内湾の水質についても同様の検討をくわえることによって, その特性がより明らかになると思われる. 伊勢湾の場合, 水質分布に重要な役割を占めると思われる溶存性の有機態窒素およびリンの成分分析をすることによって, 窒素およびリンの循環機構がより明らかになると思われる.