日本海水学会誌
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39 巻, 5 号
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  • 尾方 昇
    1986 年39 巻5 号 p. 289-309
    発行日: 1986年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    ポンプ利用多層型流動床吸着法による海水ウラン採取プロセスの吸着工程の, 設備の概要, 適正な運転条件およびコストを単純化したモデルにより推定する方法を検討し, 吸着剤としてチタン酸造粒体およびアミドキシム樹脂を用いた場合の代表的試算例を示し, さらに各パラメータの影響を推定して改善の方向を検討し, 将来のコスト低減の可能性を予測した.
    計算モデルは流動床の膨張比, 回収率, 吸着速度がバラシスする流速, 層高, 吸着量を求め, その条件での設計仕様を計算し, これをもとに建設費, 運転費およびコストを求めた. おもに膨張比を変えてコストの最小となる条件を試算コストとした. 吸着量はBangham式を基本とし, 粒径, 空間流速, 水温, 海水中のウラン濃度による変動を実験式で修正して予測した. 流動床の膨張此はMax Levaの式により推定した. 構造物は鉄筋コンクリート, 吸着床の壁面, 床面はFRPとし, 1m間隔に支持用鋼材が入るものとした. 吸着剤は劣化した場合のコスト上昇と交換経費がバランスする点で全量交換とした. 立地は温暖な外洋に面する海水を利用できるものとし, 回収率80%, 膨張比3, 吸着日数50日, ユニットの高さ30mを上限として最適化した. プラント規模は初期生産量100t-U/yとした.
    海水量と装置規模は回収率と年間生産量で定まり, 回収率80%, 初年度年間生産量100tonでは, 海水量1,500t/sec, 規模は概略延長800m× 奥行き80m×高さ30mである. チタン酸吸着剤は単価が安く, 密度が大きく, 耐久性があるが, 吸着容量が小さい. 装置規模は125t/hrのポンプを用い1ユニットの幅を約60mにすると, 静置層高1m, 線流速52m/hr, 膨張比2.5, 装置内の海水流速500m/hr, 層段数4層となった. 建設費は吸着剤を含め約1,000億円で, コストは160$/lbアミドキシム樹脂は吸着容量が大きいが, 単価が高く, 密度が小さい. 装置規模はポンプ容量, ユニット幅, 装置内の海水流速を同一とすれば, 静置層高0.08m, 線流速11.6m/hr, 膨張比3.0, 層段数27層となった. 建設費は1,500億円で, コストは280$/lbとなった.
    さらに種々のパラメータ, たとえば吸着剤の性能, 物性, 立地条件, 運転条件, 設計条件, 各種単価などが変化したとき, コストにどの程度影響するか (各パラメータの感度) を求めた. チタン酸吸着剤では吸着容量の影響が最も大きく, 次いで吸着速度, 回収率, 金利, 吸着床製作加工費, 水温, ウラン濃度, 吸着剤単価などである. 一方, アドキシム樹脂では吸着剤の密度の影響が最も大きく, 次いで吸着剤の粒径, 価格, 耐久性, 回収率, 膨張比, 水温, ウラン濃度, 吸着床製作加工費の影響がある. 著者が可能性があるとして仮に設定した技術的改良条件として, 建設費20%減, 回収率10%増, 吸着剤単価約30%減, 初期吸着速度約80%増, チタン酸吸着剤では吸着容量の増, アミドキシム樹脂では吸着剤劣化の減および密度, 粒径, 膨張比, 吸着日数の増を仮定すれば, ウランコストはチタン酸吸着剤で67$/lb, アミドキシム樹脂で79$/lbまで低減できた.
    海水ウランのコストがどの水準で実用化できるかは, 市場のウラン価格, 供給の安定性を決定する社会的環境, 長期的な資源および需要の予測, ユネルギー資源の自給への要望の強さなどさまざまな要因で定まるものであり予測は困難である. 21世紀の価格は誰にも予測できないし, 市場価格に比較してどの水準に達したとき日本のエネルギー自給の手段として工業化できると判断するかもわからない. 価格や価値判断は社会的, 政治的バランスの上で変動してゆくものである. しかも海水ウランの技術の進歩によりコストは急激に市場価格に近づきつつある. 本報はその一つの例証として試算することも目的としている. いずれにせよ技術としての資産は5年や10年ではできない. やはりそのためには時間と予算の種を蒔いてはじめて実りのある結果を得ることができよう. 海水ウランはエネルギー資源が乏しい目本にとって貴重な自給資源となり, その資源絶対量の大きさから価格上限を設定するバーゲニングパワーになるとともに, ウラン資源の寡占国の支配からいくらかでも自立の方向を指向できることになり, さらに高速増殖炉の時代にはウランの完全自給を達成できる. 幸いなことに日本は海に関する立地条件は優れており, 海水利用工業の技術は世界に誇れる水準にあり, この条件を生かすことは将来の貴重な技術的資産を作ることになる. 海水ウラン採取の研究はいわゆるものまね技術開発ではなく日本独自の技術による開発である. 外国からの技術導入になれた日本の体質が, 短期間で採算ベースに乗らない, リスクのある独自の開発に積極的になりうるか若干の不安は残るところである. 仁尾モデルプラントは海水ウラン開発が基礎研究から実用化研究へ進む第一歩であり, 順調な発展を期待するとともに各界の理解と支援を心からお願いする.
  • 太田 立男
    1986 年39 巻5 号 p. 310-319
    発行日: 1986年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
    1) 従来からの沿岸海況解析は, 塩分と水温から行われていたが, Park (1967) は溶存酸素と栄養塩含有量から水塊分析の基本的考え方をのべた. 筆者はParkの基本的考え方が, 伊勢湾の各海域において成り立つものかを検討した. その結果, 伊勢湾の各海域の栄養塩類濃度は, 酸素利用度との関係によってある程度推定が可能であることがわかった.
    2) 各海域の栄養塩類の実測値の違いは, 主として保存性濃度によって生じているものと思われる.
    3) 伊勢湾では. しばしぼ生じるプランクトン異常生産のために期待値以上に, 窒素が消費されている. また, リンに比較して窒素の再生が大きい.
    4) 表層水では, 塩分量27~30‰を境にして湾口海域と湾奥海域との違いが, おおよそ分類できる. 底層水では距岸5km沖合で水深10m前後を境にして沖合海域と港内および河口海域との違いが, おおよそ分類できる. これらの現象は河川水および都市排水の影響と光合成活動の程度に起因するものと思われる.
    5) 伊勢湾海域の水質は, 一定の規則に支配されていることが明らかとなったが, 東京湾・瀬戸内海など各内湾の水質についても同様の検討をくわえることによって, その特性がより明らかになると思われる. 伊勢湾の場合, 水質分布に重要な役割を占めると思われる溶存性の有機態窒素およびリンの成分分析をすることによって, 窒素およびリンの循環機構がより明らかになると思われる.
  • 橋本 壽夫
    1986 年39 巻5 号 p. 320-350
    発行日: 1986年
    公開日: 2013/02/19
    ジャーナル フリー
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