抄録
供試したマングローブ植物6種は, いずれも根細胞膜において過剰塩類の通過 (吸収) をできうるかぎり最少限に調節している種である. 供試したマングローブ植物6種の根中 (根毛および側根・主根) には, 陸上植物では到底見られない高濃度のNa+イオンとそれの対イオンであると考えられるCl-イオンの蓄積が顕著であった. 一般植物の正常な生育にとって有毒イオンは多くの植物では, まず根に集積されることから供試したマングローブ植物6種についても過剰に吸収したNa+イオンの行動は, まず根において過剰吸収塩類が蓄積され次いで導管を経由し茎葉部へ移送され葉内での蓄積を行い塩類腺から排出するか, 落葉とともに廃棄することにより高塩濃度下での生育を可能にしていることがこれら供試6種のマングローブ植物についても十分示唆される. 一方, 植物の生育の上で必須であるK+イオンは, 供試したマングローブが植物6種の根中には種による濃度差が認められるが海水中のNa/K比から比較するとK+イオンの各種根中の分布濃度からK+イオンは積極的に植物体に取り込まれていることが示唆される.