日本海水学会誌
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パンガ地域の地下水成分の季節変化について
タイ国マングローブ林域の環境生態学的研究 (1)
加藤 茂パニチュスコ ソムチャイ長野 敏英杉 二郎
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1990 年 44 巻 6 号 p. 355-360

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抄録

タイ国南部のパンガ地域のマングローブ林内に3調査地を設定し, 地下水の採取を乾季と雨季に行いそれらのイオン組成分析を行い地下環境とマングローブ樹種の関係について検討した.
各調査地の構成主イオンは, 雨季および乾季ともにNa+イオンとCl-イオンであった.次いで, Mg2+イオン, Ca2+イオン, SO42-イオンが高い濃度であった.3調査地のうちで海に最も近いB調査地が, Na+イオンおよびCl-イオンともに他の調査地に比較して雨季, 乾季ともに高い濃度を示した.また各調査地のマングローブ植物種は, マングローブ林縁前線で水際に最も近い採水ポイント0m付近には高塩濃度環境下 (約3~4%NaCl) で生育をする種であるAvicennia sp.(ヒルギダマシ属) やSonneratia sp.(マヤプシキ属) の分布が数多く認められた.林奥部に進むに従いヒルギダマシ属やマヤプシキ属の後背地に分布するマングローブ種が増加していたことは, 地下水および流入河川水中のNa+イオンおよびCl-イオンの濃度によりマングローブ種により生育分布域すなわち最適生育分布域が異なることが認められた.各調査地の採水ポイントにおいてSO42-イオン濃度が平均海水中のSO42-イオン濃度よりも高い値を示した.

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