日本海水学会誌
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海水中のケイ素について
三宅 泰雄猿橋 勝子鷺 猛金沢 照子
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1990 年 44 巻 6 号 p. 374-379

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抄録

ケイ酸塩は海洋では重要な栄養素である. われわれは, 1971年, 海水中のケイ酸塩濃度の観測を, 東京大学所属の観測船上で行った. これらの測定結果を用いて, 海洋におげるケイ酸塩濃度の問題を討議した.
ケイ酸塩濃度は表面で小さく, 深さとともに増大する.ケイ酸塩の平均総濃度は, 北太平洋で高く, 南太平洋で低い. 見掛けの酸素消費量 (AOU) と硝酸塩濃度等とは, ほとんど直線関係にあることがわかっているが, ケイ酸塩の場合は, とくに一定の関係はない.
これは, 海洋におけるケイ酸塩の大部分は, 酸化以外の過程によって生成されていることを示す.ケイ酸塩の海洋における滞留時間は, 約10,000年であるが, 化学的性質の違いによって海洋におけるケイ酸塩の様相は, 他の栄養塩とはまったく異なる.海洋におけるケイ酸塩濃度の循環についても考察した.

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