日本海水学会誌
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塩生植物の塩応答性について
(1) マングローブ植物, メヒルギと塩環境
加藤 茂
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1992 年 46 巻 2 号 p. 89-95

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抄録

マングローブは, 熱帯・亜熱帯の海岸線や河口域の定期的に海水あるいは汽水の流入する地域に分布し生育している植物群である. マングローブ林の構成樹種であるメヒルギは, マングローブ林が海水の影響を直接受ける先端域にはほとんど分布が見られない種である. メヒルギ栽培試験の結果, F-20区すなわち0.6%NaCl濃度における生育がもっとも良好であった. 平均的な海水塩分濃度である3%NaClのF-100区における生育は, 発根が認められたが葉の伸長展開は非常に劣っていた. メヒルギ栽培液中のNaCl濃度上昇とともにNa+イオンおよびCl-イオンの吸収が増加し植物体内蓄積濃度も増加した. メヒルギの葉内および根内に分布したおもな有機酸としてシュウ酸とリンゴ酸が認められこれら有機酸類は, 過剰カチオンと塩を形成して浸透圧調節を行っていることが推察された. メヒルギの幼苗生産を行うには, 約0.6%NaClの塩分環境下において初期栽培を行い伐採後のその地に移植することによりメヒルギ分布域のマングローブ林の再生を順調に行うことが可能であることが推察される.

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