抄録
現在わが国の製塩工場では, もっぱら外側加熱型の蒸発缶 (結晶缶) が使われている. これらの結晶缶には, 缶内液の循環方向が蒸発室の中で下降流となるものと, 上昇流となるものの2方式がある. 従来, 一般的に採用されたのは下降流方式で, 生産塩の粒径はd50で320~420μm. これに対して, 上昇流方式は粗粒 (600~850μm程度) の塩を製造しやすいことから, 近年採用されることが多くなった.
一方, 各製塩企業では「晶析」をテーマとしたOJT研修が盛んに進められており, 先日その成果の一端が披露された. その中に, 結晶缶内の循環量と生産塩粒度の関連を調べたデータがあり,「循環量を定格から下げてゆくと上昇流方式の場合は生産塩の粒径は大きくなり, 下降流方式では逆に小さくなる」となっている.
結晶缶の型式によって, なぜ生産塩の粒径が変おるのかという点について考察した. まず, 結晶缶中での結晶の成長は主として蒸発室内で進行するとの考えに立って, 循環量はその蒸発室内 (缶胴部) の垂直方向の平均粒速で整理し, また塩粒子の粒径に対応する沈降速度を算定した. この両者から, 蒸発室内における塩粒子の挙動を考察することによって, 生産塩の粒径が変化する前述の現象を解明することができた. また, 上昇流方式と同じ特性を示す以前の標準型蒸発缶について, 缶内の流動と結晶成長の状況を考察した.
これらの考察の結果, 結晶成長域内での液流を活用し分級効果を高めることによって, 目標とする粒径でかつ粒度の整った生産塩を得ることができると確信している。