今回の試験で得られた知見を要約すると次のようになる.
1) 凝集晶の観測において, 凝集晶の観測誤差となる供試料の処理方法を検討した結果.
(1) アルコール洗浄量と洗浄回数によって, 結晶の接着を緩和しさらに手でもみほぐすことにより凝集晶率測定の誤差は小さくなる.
(2) 結晶成長に伴い, 凝集晶の判別ができなくなる.
2) 大粒塩製造初期運転への応用
(1) 定常状態である, No.2号結晶缶のスラリー濃度3水準運転で凝集晶率と懸濁結晶表面積, 成長速度, 生産速度に有意な相関性を得た.
(2) 大粒塩製造初期運転において, 結晶表面積小, 生産速度大の場合従来方法と比べ結晶成長速度は約2倍となった. このことは凝集晶率の差に起因するものと考えられる.
(3) 限られた条件下ではあるが, 実装置運転での, 凝集晶の発生確率xと懸濁結晶表面積xとの間につぎの関係式を得た.
log y=-0.81log x+6.446
この関係式は, 大粒塩製造初期運転において成立することがわかった.
(4) 初期目標粒径到達時間の短縮, 不良粒径製品の減少により生産性の向上ができ, 実運転での成果を得た.
今後は, 運転ならびに設備の関係上制約はあるが本試験結果をもとに生産性を高めニーズにあった多品種粒径製品に対応できる育晶条件を確立したいと考えている.
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