日本海水学会誌
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伝熱面への硫酸カルシウムスケールの析出機構と粒子混入による機械的洗浄
森 英利中村 正秋外山 茂樹
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1994 年 48 巻 2 号 p. 91-99

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抄録
海水の代表的スケールとして硫酸カルシウムスケールをとりあげ, その伝熱面への析出機構および粒状物混入による機械的洗浄効果を二重管式間接加熱法により考察し, 以下の結果を得た.
(1) ファウリング曲線は典型的な漸近型ファウリングの形態を示し, 流速の増加に伴い漸近値が減少する傾向が実験的に示された. またファウリング層の成長機構を推定するため, 一般化されたファウリングモデルを適用してファウリング曲線の特性パラメーターの流速依存性を考察し, スケール層が表面プロセス支配機構で成長していることが確認された.
(2) ファウリング層の機械的洗浄法による効果を, 粒状物の混入により評価した. その結果, 除去速度は片対数紙上で流入粒子負荷量に対して直線的に減少することが実験的に示され, その勾配によって除去特性が評価できることを示した. また単位濃度当りの除去速度の流入粒子負荷量に対する依存性は, 流速によって異なることが実験的に明らかとなった.
(3) 粒状物混入によるスケール層の最終除去割合は, 比較的低濃度で漸近値を示す傾向がみられた. このときの粒子濃度は約40~50kg/m3で, 一例として比較した流動層式熱交換器における粒子濃度よりもかなり低く, 除去率も30%程度低いだけであった. またスケール層断面のEPMA観察により, 除去されずに残留するスケール層は均一で緻密な構造をしており, 伝熱抵抗も大きいことが確認された. 上記の結果は, いずれも回転円筒法を用いた硫酸カルシウムスケールの特性評価の結果とよい一致を示しており, ファウリング流体および析出スケールの特性評価装置としての回転円筒法の有用性が確認された.
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