以上, カリウムイオンや臭化物イオンを格子イオンとして記憶させておき, これらイオンだけを選択的にイオン交換除去可能な新しい無機系イオン交換体の開発に関して述べてきた. 今回の研究の結果,
1) トンネル構造を有するモリブデン酸アルカリKMo
5O
15OH・2H
2Oは, ナトリウムイオンや水素イオンと容易にイオン交換することを見出した. このうちナトリウムイオンで交換したものはイオン記憶機能をもち, カリウムイオンとナトリウムイオンの混合水溶液中のカリウムイオンに対して選択的なイオン交換除去特性を示すことが判明した.
2) トンネル構造をもつタングステンブロンズ型のKNbWO
6のカリウムイオンは約20%が水素イオン (オキソニウムイオン) と交換し, この交換物はカリウムイオンとナトリウムイオンの混合水溶液から共存するナトリウムイオンの量に関係なくほぼ一定量のカリウムイオンを除去するという優れたイオン記憶能を有することが判明した.
3) 層状構造のK
2Mn
4O
8に酸処理を行ったものにも, カリウムイオンの選択的除去剤としての可能性があることが明らかになった.
4) Na
+形テニオライトNaMg
2LiSi
4O
10F2・2H
2Oなどのフッ素雲母には優れたカリウムイオン記憶特性があることが判明した. 特にNa
+形テニオライトはカリウムイオンを高度に選択的にイオン交換除去するイオン交換体として有望であることが明らかになった.
5) 臭化物イオンに関しては, 鉛プロムアパタイトからイオン交換により作成した鉛プロムクロロアパタイトは,塩化物イオン共存下でも臭化物イオンをイオン交換除去することが判明した.
今後は, より優れたカリウムイオンやプロムイオン記憶特性をもつイオン交換体を開発したいと考えている.
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