日本海水学会誌
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飼育水温がヒラメ稚魚耳石の元素組成に及ぼす影響
角田 出
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1996 年 50 巻 5 号 p. 349-355

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抄録

1) 耳石の元素組成の変化から魚類の生息環境履歴を捉えるための基礎資料を得ることを目的として, 飼育水温の違い(9℃, 12℃, 15℃, 19℃, 22℃, 25℃) がヒラメ稚魚耳石の元素組成に及ぼす影響を調べた.
2) 荷電粒子励起X線放射化 (PIXE) 法は耳石中元素の高感度検出法として有効であった.
3) 耳石のSr/Ca比と生息水温の間には, 水温12℃から22℃の範囲において, 負の相関が認められた.
4) 水温9℃から25℃の範囲において, 耳石のCl濃度およびCl/Ca比と水温の間には負の相関が, Zn濃度およびZn/Ca比と水温の間には正の相関が認められた.
5) 耳石のK, Fe, Mn, Cuの濃度および当該元素とCa濃度の比と水温の間には有意な関係は認められなかった.
6) 耳石のSr/Ca比, Cl濃度, Cl/Ca比, Zn濃度, Zn/Ca比は魚の生息水温履歴を予測する際の有効な指標となる可能性がある.

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