抄録
本研究では, 不純物として塩化カリウムを含む水-塩化ナトリウム系をモデルとし, 貧溶媒としてエタノールを用いた場合の貧溶媒添加法により生成した塩化ナトリウム結晶への操作条件が及ぼす影響について, 発生核の単分散性, 表面状態, 不純物含有量に着目することにより, 不純物存在下における晶析挙動について実験的検討を行った. その結果, 一部の操作条件において, 単分散性の高い結晶が得られた. SEMによる結晶表面の観察により, NaCl/KCl比=10の結晶は表面が滑らかな立方晶 (cubic) であったのに対し, NaCl/KCl比=14の結晶は表面にくぼみをもつ骸晶 (hollow) が得られた. これは, カリウムイオンが塩化ナトリウムの結晶の成長を抑制したことによるものと推察された. 操作条件と製品結晶中のカリウムイオン濃度の関係より, カリウムイオンが特に塩化ナトリウム結晶表面において多く存在することが示唆された. 原料液のカリウムイオン濃度が高いほど, 核化までの待ち時間が減少し, 結晶平均径が減少する傾向が認められた. これは, カリウムイオンの存在により塩化ナトリウム結晶の一次核化が促進され, 結晶生成個数の増加が結晶粒径の減少に寄与したことによるものと推察された.