日本海水学会誌
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1-フェニル-3-メチル-4-ステアロイル-5-ピラゾロンを担持したシリカゲル吸着剤による鉄 (III) イオンの拡散反射/吸光光度定量
佐藤 健二森田 隆史高橋 由紀田中 誠之赤間 美文
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2004 年 58 巻 4 号 p. 413-419

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抄録
キレート試薬である1-フェニル-3-メチル-4-ステアロイル-5-ピラゾロン (HC18) は鉄 (III) イオンと安定な赤色の錯体を形成することから, HC18をシリカゲル担持させたものを吸着剤として用い鉄 (III) イオンの拡散反射/吸光光度定量法について検討した. 鉄 (III) イオンが吸着したことで赤色に呈色した吸着剤を厚さ3mmの石英セルに入れた後, 分光光度計の試料室内に装着した積分球装置を使用して拡散反射法により吸光度を測定した. 鉄 (III) イオンはpH2.0-6.0までの幅広いpH範囲で定量的に吸着され, 一旦吸着し赤色に呈色した吸着剤は少なくとも1ヶ月は安定でその吸光度に変化は認められなかった, バッチ法で検量線を作成した結果, 少なくとも0.5-10μgの範囲で鉄 (III) イオン量と吸光度との間に良好な相関関係が得られた. 相対標準偏差 (n=7) は3%以下であり, 又, 検出下限 (1%吸収) は0.1μgであった. カラム法による吸着では, 試料溶液の流量が8ml/minまでは定量的に吸着され, 又, 8μg/Lから定量的に吸着/濃縮が可能であった. 鉄 (III) イオンの吸着に対し各種共存物質は影響しなかったが, 100倍量の銅 (II) イオンの存在下では正の影響を受けることが分かった. 本法により天日塩, 海水, 河川水及び水道水中の鉄 (III) イオンを測定した結果, 天日塩は0.08μg/g, その他については0.01-0.05μg/mlであり, 測定時の回収率は97-103%であった.
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