日本原子力学会和文論文誌
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50L規模の雑固体廃棄物溶融固化体の性能と放射能分布の均一性評価
中塩 信行中島 幹雄平林 孝圀
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2004 年 3 巻 3 号 p. 279-287

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抄録

原子力施設で発生する多種多様な低レベル放射性固体状廃棄物(以下,雑固体廃棄物)は施設の敷地内等に保管され,その保管量は2001年3月末では200リットルドラム缶換算で約91万本に達している。今後は,老朽化した原子力施設の廃止措置に伴う廃棄物も大量に発生することから,最終的な処分に対応できる効果的な廃棄物の減容処理方法の確立が必要である。
雑固体廃棄物の溶融処理は,減容比が大きいこと,放射性核種を固化体内部に閉じ込めて安定化できること,放射能分布の均一化ができること等により,有望な減容安定化処理方法として注目されている。国内外で様々な溶融処理技術が開発されているが,加熱手段としては高周波加熱を用いる方法とプラズマ加熱を用いる方法の2つに大別される。これまでに,国内の原子力発電所では,導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式と回転炉床式のプラズマ溶融加熱方式が導入されている。日本原子力研究所東海研究所(原研)では,2003年2月に高周波誘導加熱方式の金属溶融設備とプラズマ溶融加熱方式の焼却溶融設備によって構成される高減容処理施設が完成した。
将来的な放射性廃棄物処分のためには,廃棄体に含まれる放射性核種濃度を正確に検認する必要がある。発電所で発生した廃棄体の放射性核種検認に当たっては,スケーリングファクタ法等の簡易法が適用されるが,様々な研究機関における研究開発で発生した放射性廃棄物は,様々な放射性核種が含まれていること,廃棄物の性状,含まれる放射性核種の濃度も一様ではないことなどの特徴を有することから,発電所廃棄物と同様の簡易法は必ずしも適用できない可能性がある。したがって,溶融処理により放射能分布の均一な固化体を製作することは,放射能検認分析を容易にするうえで極めて重要である。
本研究では,均一な溶融固化体の製作手法に資することを目的とし,高周波誘導加熱とプラズマ加熱を併用するハイブリッド加熱方式および導電性るつぼを用いる高周波誘導加熱方式の2つの溶融方式によって50L規模の溶融固化体を製作した。ハイブリッド加熱方式は,導電性の金属廃棄物を高周波誘導加熱で,非導電性の非金属廃棄物をプラズマ加熱で効率的に溶融するために用いた。
製作した8体(各方式4体)の固化体のうちの6体は,別に報告されている浸出試験に供された。浸出試験に供されなかった2体と浸出試験に用いた6体のうちの2体について,固化体性能評価を行うために解体し,固化体のモルタル充填状況や放射性核種の分布状態および固化体性状の変化を調べた。

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