抄録
近年、レーザーを用いずにOH反応性を測定する競争反応法による実大気のOH反応性測定結果が報告された。我々も同様の手法の開発を行い、信頼性のあるレーザーを用いた手法との比較実験を行った。競争反応法の利点は装置が小型で比較的容易にOHの反応性測定を行えることである。濃度既知の単成分標準ガスのOH反応性を競争反応法で測定した。標準ガスはCO、エタン、プロパン、エチレン、イソプレン、NO2を使用した。標準ガスの結果について競争反応法によるOH反応性の実測値と計算値の間に直線関係が見られた。しかし標準ガス全てについて実測値が計算値の約1/5の値を示す結果となり、実大気のOH反応性測定を行う際には過小評価を補正する必要が示唆された。2008年10月に東京郊外においてレーザーを用いた手法と競争反応法で実大気のOH反応性の比較測定を行った。両手法による実大気のOH反応性は同様の変動傾向を示した。しかし観測中のほとんどの時間において競争反応法で測定したOH反応性がレーザーで測定した値を3割程度下回った。今後、競争反応法がOH反応性を過小評価してしまう原因を調査し改善する必要があるが、レーザーを用いた手法と競争反応法で測定した実大気のOH反応性は同様な時間変動傾向を示し、この手法により実大気のOH反応性測定が可能であることが示唆された。