大気環境学会誌
Online ISSN : 2185-4335
Print ISSN : 1341-4178
ISSN-L : 1341-4178
原著
東京都区内の常時監視測定局と道路交通センサスのデータを利用したNOx・SPM濃度への自動車の影響とその変化の推定
水野  建樹目黒  靖彦
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 45 巻 3 号 p. 117-125

詳細
抄録

都市部のNOxやSPMの最近の濃度減少に対して、自動車への排出規制がどの程度寄与したのかを道路交通センサスと常時監視測定局のデータを用いて推定した。都区内のように多くの自排局と一般局が混在しているような地域では、自排局と一般局のNOxやSPMの平均の濃度差は主要な道路を通行する自動車からの排出量と直接関係していると仮定して、1999年度と2005年度におけるそれぞれの濃度差と道路交通センサスの結果を組み合わせることによってディーゼル車とガソリン車の寄与率を推定した。次に、両年度における道路交通センサスデータ濃度差と交通量の差異からそれぞれの自動車の寄与率の変化を推察し、ガソリン車やディーゼル車への規制の効果を見積もった。その結果、NOxに対してはガソリン車への規制が大きな効果があり、規制により6年間で45%近い排出削減となったことが見積もられた。一方で、ディーゼル車規制では10%程度の削減に留まっていることが把握できた。SPMに対しては、道路直近だけの濃度を取り出せばガソリン車はほとんど無関係で、ディーゼル車だけの影響であることがわかった。さらに、1999年度からの6年間で、都区内を走行するディーゼル車全体で70%程度SPM排出量の削減が進んだと推察され、SPMの濃度減少にはディーゼル車への規制が極めて大きな効果があったことがこの解析からも裏づけられた。

著者関連情報
© 2010 社団法人 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top