大気環境学会誌
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原著
ベイズ統計手法による都市大気オゾンの日内変動と季節変動の分離評価
板野 泰之高倉 耕一
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2011 年 46 巻 3 号 p. 179-186

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抄録

ベイズ統計学的手法を用い,都市大気オゾン(O3)の濃度変動を日内変動と季節変動に分離して評価する手法を検討した。一酸化窒素によるO3の分解の影響を除くためにポテンシャルオゾン(PO)を解析対象とし,PO濃度の変動を日内変動パターン(Dh)とその変動幅(Bm)の積で表す日内変動成分と季節変動成分(Am)の和として表すベイズモデルを考え,各パラメータを推定した。大阪市,神戸市,東京都心部,および川崎市を対象に解析したところ,全ての都市から同様の日内変動パターン(Dh)が得られた。Amについては夏季に増加する季節変動があり,関東地域の2都市では8月に急激に増加する傾向が共通して認められた。Bmについても全ての都市で類似の季節変動パターンが認められたが,夏季の変動パターンにおいて関西地域と関東地域でことなる特徴が見出された。日内変動成分(Bm×Dh)を各都市におけるその場の光化学生成,季節変動成分(Am)をバックグラウンド濃度と考えて各都市のPO濃度の変動を考察したところ,夏季における活発な光化学生成のため夏季のPO濃度が増加し,秋季の濃度との差が小さくなったことが関東地域において秋季のPO濃度のピークが不明瞭であった原因であったことが解かった。また,8月には光化学生成の寄与率,寄与濃度共に最大となり,特に東京都心部では地域汚染の影響が極めて大きいことがわかった。

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© 2011 社団法人 大気環境学会
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