大気環境学会誌
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技術調査報告
埼玉県における揮発性有機化合物の地域的時間的濃度変動の特徴と光化学オキシダントとの関係
竹内 庸夫松本 利恵唐牛 聖文
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2012 年 47 巻 3 号 p. 127-134

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抄録

 埼玉県の海風時の風上および風下地点において、季節別時間帯別に揮発性有機化合物(VOC)濃度の特徴を把握した。その上で、光化学オキシダント(Ox)の高濃度現象を、VOCの物質別濃度から検討した。各季節のOx高濃度日を含む15日間について、調査対象とした99物質のうち、成分分類として組成比が高かったのはアルカンと芳香族であるが、オゾン生成能としてはアルケン、芳香族、アルデヒドが大きい寄与率を示した。これらを構成する主要な物質は、エチレン、プロピレン、ブテン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドであった。経時変化をみると、Ox高濃度日には日中のVOC排出が関係していると考えられ、特に風上側である県南部地域における日中のVOC高濃度化が、風下側である北部地域のOx高濃度に影響していると示唆される事例が認められた。また、アルデヒドはいずれの季節においても日中に濃度が上昇するが、特に夏季に顕著であり、その濃度変動はOxの濃度変動と類似していた。アルデヒドの多くは光化学反応によって生成されることを示しており、Ox生成に強く寄与すると考えられる。

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© 2012 社団法人 大気環境学会
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