大気環境学会誌
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原著
丹沢山地における樹木のオゾン取込み量の推定
斎藤 正彦若松 伸司相原 敬次
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2013 年 48 巻 6 号 p. 251-259

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抄録

丹沢山地のブナ林の衰退原因の一つとしてO3が挙げられているが、丹沢山地全域でO3濃度がどのような状況にあるのかは分かっていない。そのため本研究では、数値モデル(気象モデルと大気質モデル)を用いてO3濃度を算出し、気孔からのO3 の取り込み量(PODyaccumulated Phytotoxic Ozone Dose, y = a threshold)を推定した。計算期間は開葉から落葉までを含む7ヶ月間として、数値モデルによりO3濃度や気象要素(温湿度、日射量、風速)を計算した。丹沢山地の犬越路局で実測されたO3濃度、温度、湿度から求めたPOD126.2 mmol/m2)とモデルから求めたPOD1 (27.7 mmol/m2) とを比較した結果、ほぼ同程度の値が得られ、モデルに適用可能性があることが示された。POD1の水平分布から、丹沢山地全域でPOD1のクリティカルレベル4 mmol/m2/yearUNECE, 2010)を大きく超えており、これは首都圏からのO3生成の前駆物質の排出の影響であると考えられる。夏季にO3フラックスが低下するのは、O3濃度の低下と飽差や日射量の気孔パラメータ値の減少により、気孔が閉じる傾向にあったためと解釈される。また、気孔の開口に好適な温度および湿度条件により、標高が高いほどPOD1が大きくなり、標高の高いところに生育しているブナには大きいリスクとなっている。AOT40 についても、同様に丹沢山地全域でクリティカルレベルを超えているが、AOT40 による評価に比べO3フラックスFstが時間値で推定され、詳細にO3による影響を考察することができる。

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© 2013 社団法人 大気環境学会
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