大気環境学会誌
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研究論文(技術調査報告)
PM2.5の炭素成分測定における正のアーティファクトの影響
長谷川 就一
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2016 年 51 巻 1 号 p. 58-63

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抄録

PM2.5の炭素成分の測定に使用する石英繊維フィルターは、ガス状OC (OCG) を吸着し粒子状のOCを過大評価する(正のアーティファクト) 。本研究では、埼玉県加須市において活性炭デニューダを用いてOCGを除去したサンプリングを、一般に行われている活性炭デニューダを用いないサンプリングと同時に行い、OCGの吸着の度合いやその季節変動を考察した。その結果、OCGの季節平均は0.26 μg/m3 (秋季) ~0.42 μg/m3 (冬季) の範囲で季節間の差は小さかった。OCGをフラクション別に見ると、全般的にOCGの7~9割程度がOC1とOC2に存在した。デニューダなしのOCに占めるOCGの割合 (OCG/OC比) は、OCが2 μg/m3以下のときに高くなったことから、OCが低濃度のときは正のアーティファクトの影響が大きいことが明らかとなった。OCG/OC比をフラクションごとに見ると、OC1は他のフラクションに比べて高く、次いでOC2が高かった。試行として、デニューダなしで測定されたOCにおいてガス状OCの吸着がどの程度影響しているかを推定するため、本研究で得られたOCとOCG/OC比の関係により、OCからOCG/OC比を求める関係式を求めた。

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© 2016 大気環境学会
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