大気環境学会誌
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総説
大気エアロゾルのフィールド観測から発生源を追う―Sbを指標としたレセプター解析―
飯島 明宏
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2018 年 53 巻 2 号 p. 45-53

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抄録

人間活動の増大とともに、大気エアロゾル中のSbの汚染レベルが高まっていることを指摘する研究が数多く発表されたことを受け、Sbの発生源探索とレセプター解析における指標性の確立を目指して研究を開始した。大気エアロゾル中のSb濃度の長期モニタリングに基づく経年変化の特徴、粒径分布や元素組成等のフィンガープリントを出発点に、候補となる発生源を探索しプロファイリングを行った。大気エアロゾル中のSbは微小フラクション (粒径0.5–0.7 μm) と粗大フラクション (粒径3.6–5.2 μm) のそれぞれにピークをもつ特徴的な二峰型の分布を示し、微小側のピークはCdおよびPbと、粗大側のピークはCuおよびBaと類似した分布形状であった。微小フラクションおよび粗大フラクションの粒径域および元素組成は、それぞれ廃棄物焼却飛灰および自動車ブレーキダストのプロファイルとよく整合した。化学質量収支 (Chemical Mass Balance: CMB) モデルにより、Sbに対する発生源寄与の割り当てを試みたところ、道路沿道では廃棄物焼却飛灰および自動車ブレーキダストがそれぞれ38%および55%の寄与率をもつと推計された。また、大気エアロゾル中から検出されたより有害性の高いSb(III) が、自動車ブレーキダストに由来することも明らかにした。本稿では、大気エアロゾル中のSbの発生源およびその寄与評価に着目した今日までの研究の展開を概観しつつ、レセプターモデルを用いた大気エアロゾルの発生源解析に関する研究の展望についても言及する。

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© 2018 大気環境学会
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