大気環境学会誌
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研究論文(ノート)
バイオモニタリングを用いた大阪市沿道の大気汚染解析
三原 幸恵 村重 陽志守口 要嶋寺 光松尾 智仁近藤 明松井 敏彦原井 信明重吉 実和世良 耕一郎
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2018 年 53 巻 3 号 p. 79-87

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抄録

道路沿道では、局所的な高濃度汚染が推測されるが、測定局数は限られているため、現状での把握は困難である。そこで、バイオモニタリング手法に着目し、大阪市沿道のイチョウの葉をバイオモニターとして測定を行った。葉の採取は2014~2016年の春、夏、秋の計9回行い、PIXE (Particle-induced X-ray emission) により葉に付着した粒子の元素成分分析を行った。単位葉面積当たりの粒子量及び元素質量は発芽からの時間経過に伴って増加し、葉上に蓄積することが示唆された。また、採取時期別の元素質量比を確認したところ、春には黄砂の元素成分が多く、夏秋には交通由来の元素成分が春よりも大きくなっていた。バイオモニタリング結果と交通量の関係を検討したところ、有意な相関が見られた元素は、交通由来や重油燃焼由来のFe、Cr、Mn、Ni、Zn、Vであった。また、発生源プロファイルと元素質量比を比較したところ、交通由来の発生源の元素質量比はおおむね一致しており、沿道の特徴を捉えることができた。採取地点近傍の自排局におけるSPM (Suspended Particulate Matter) とバイオモニタリング結果の元素質量比は、粒子径の違いや葉からの脱離しやすさによりほとんど一致しなかった。バイオモニターにケヤキを用いた場合の元素質量比はイチョウを用いた場合とおおむね一致し、他の樹種に適用できる可能性が示唆された。以上から、バイオモニタリング手法が沿道大気汚染推定において有効な手法であることが示唆された。

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© 2018 大気環境学会
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