2020 年 55 巻 5 号 p. 221-229
オゾン(O3)は大気中の酸化剤の一つであるため大気化学反応過程に重要な役割を果たしている。高濃度となった場合、植物や人へ影響が懸念されている。日本およびアジアのO3濃度は増加傾向にあり、都市域だけでなく遠隔地域においてもO3の悪影響が考えられるため、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)および国設酸性雨測定所のうち日本海側に面した利尻、佐渡関岬、隠岐、対馬、五島で測定されたO3濃度(2005–2017年)について、カーブフィッティング法を用いてトレンド成分、季節周期成分、外れ値を抽出した。高濃度の外れ値をO3 outlier、それ以外をO3 normalと定義し、O3 outlierについて排出源と関連した輸送パターン特徴と近傍での生成消失と関連した日内変動の特徴について解析を行った。北方の利尻のO3 outlierでは朝鮮半島を経由する輸送パターンの割合が増加した。日本の西部に位置する隠岐では、O3 normalにおいて中国東北部を経由する輸送パターンが多いが、O3 outlierでは中国中南部および朝鮮半島を経由する輸送パターンの割合が増加した。特に暖候期(4–6月、7–9月)における輸送パターンの変化がO3濃度に対して影響を与える可能性が示された