大気環境学会誌
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速報
COVID-19に対する中国のロックダウン期間におけるPM2.5越境輸送の変容
板橋 秀一 王 哲弓本 桂也鵜野 伊津志
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2020 年 55 巻 6 号 p. 239-247

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抄録

COVID-19の蔓延に対し中国ではロックダウンという手段がとられた。この間には人為起源排出量が減少し、大陸からの越境輸送も変容したことが想定される。わが国の遠隔域(長崎県五島、島根県隠岐、新潟県巻、宮城県箟岳)におけるエアロゾル化学成分連続自動分析装置の観測データからは、2020年2–3月には2018、2019年の同期間に比較してPM2.5、硫酸塩(SO42−)、硝酸塩(NO3)濃度が30~50%程度減少したことがわかった。この要因を化学輸送モデルにより考察したところ、SO42−の減少は中国のSO2排出量がロックダウン時に大幅に減少したことが要因で、その影響は東日本まで広く及んでいた。一方で、NO3の減少については、西日本では中国のNOx排出量減少の影響も見られたが、記録的な暖冬という気象場の差が支配的な要因と推定された。

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© 2020 大気環境学会
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