2020 年 55 巻 6 号 p. 248-251
微小粒子状物質(Particulate Matter, PM)およびオゾンの観測を、越境大気汚染が卓越する春季(2–4月)に長崎県福江島において行った。2020年の福江島における観測を過去の観測結果と比較すると、PM2.5濃度およびPMに含まれる硫酸イオン、硝酸イオン濃度は減少していた。オゾン濃度についても、PM2.5濃度が35 μg/m3より高濃度の場合のみ抽出すると、例年に比べ低下していた。福江島は日本の西端に位置し越境大気汚染の影響を受けやすい地域である。新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の拡大に伴い、中国では経済活動が低下し人為起源の大気汚染物質の排出量が減少した。2020年は、中国から日本へ越境輸送される大気汚染物質の濃度が減少したと推測され、その要因のひとつとして、COVID-19の影響も考えられる。