2023 年 58 巻 1 号 p. 1-9
大気エアロゾルによるRO2取り込みはオゾン生成を抑制することが示唆されているが、実験値が報告されていないためモデル計算では取り込み係数として推測値が用いられており、その評価は暫定的なものとなっている。そこで本研究では、レーザー光分解ラジカル生成とレーザー誘起蛍光による時間分解ラジカル検出を組み合わせた手法(LP-LIF)に着目し、RO2取り込み係数決定手法としての妥当性を検証した。イソプレン由来のRO2であるISOPOOの塩化ナトリウム粒子への取り込み係数測定を行い、取り込み係数として0.11±0.02が得られるとともに、粒子表面積依存や共イオン効果がモデル予想と定性的に一致したため手法の妥当性が確認された。さらに、粒子濃度濃縮システム(VACES)を接続し大気エアロゾルによるISOPOO取り込み係数の決定を行った。測定誤差で重みづけした加重平均値として取り込み係数0.08±0.05が得られた。すべてのRO2がISOPOOと同様の取り込み係数を持つと仮定した場合、今回の観測地のような清浄な都市郊外([NOx] ~4 ppb、PM2.5 ~5 µg m−3)では2–9%程度のオゾン生成速度抑制効果が予想された。より正確な影響評価のため、今後の測定精度向上と他種RO2における室内実験および大気観測が期待される。