2024 年 59 巻 4 号 p. 63-70
インドネシアのスマトラ島やカリマンタン島では、毎年乾季にあたる南西モンスーン季に泥炭火災が生じ、それに伴って発生する煙エアロゾルがインドネシア国内だけでなく他の東南アジア諸国にも広範囲に影響を及ぼしている。特にマレー半島西岸は、南西モンスーン季にスマトラ島の風下に位置するため、泥炭火災の影響を強く受けやすい地域である。筆者は学生時代から長年にわたり、インドネシアやマレーシアとの共同研究を通じて、インドネシアのスマトラ島リアウ州の泥炭火災発生源及びリセプター(マレーシア)において、PM2.5を主とした大気エアロゾルの集中観測及び一年間観測を実施してきた。本稿では、筆者が取り組んできたインドネシアの泥炭火災に伴うエアロゾルの化学性状特性に関する研究成果を概説する。また、本研究に関連する課題や今後の展望についても述べる。