抄録
パセリを3月に播種し, 都市および田舎地帯で直射日光を避けて栽培し, 7月および11月に採取した。葉面脂質をn-ヘキサンで抽出し, カラムクロマトグラフおよび薄層クロマトグラフで精製した後, ガスクロマトグラフおよびガスクロマトグラフ-質量分析法で炭化水素類を分析した。直鎖C18~34アルカン類は総炭化水素 (THC) の80.4~94.8%を占めていた。アルカン類の主成分はn-ノナコサン (n-C29), n-ヘプタコサン (n-C27), およびn-ペンタコサン (n-C25), であった。2-メチルヘプタコサンおよびメチルノナコサンのようなな分枝アルカン類が微量成分として検出された。C20~32の1-アルケン類はTHCの1.5~2.9%であり, それらの主成分は1-オクタコセン (n-C28=1) および1-ヘキサコセン (n-C26=1) であった。都市で栽培した試料中のTHC量は7月および11月の両方において田舎のものの2倍程度であった。炭化水素の組成パターンは7月には両地域においてほとんど差はなかった。しかし11月の試料ではアルカン (n-C29, n-C27およびn-G25) およびアルケン (n-C28=1およびn-C26=1) 主成分は都市では減少し, 一方田舎ではかなり増加していた。農業地域から採取された比較用パセリの分析結果は田舎のものとよく一致していた。以上の結果から大気汚染下ではパセリの葉面THCは著しく増加する, また汚染度の高い大気のもとでは炭化水素の主成分が生長期間と共に減少する傾向があることが十分考えられる。