抄録
蘚苔類胞子の培養試験によって雨水中の大気汚染物質を評価する方法を検討した。
雨水あるいは蒸留水 (対照) を用いた栄養塩を含む寒天培養基上に胞子を播種し, 25±2℃, 1,050~1,300 lux.(12時間/日照射) で培養した。播種後10日目の胞子の発芽率と原糸体の生長度合を対照のそれと比較した。
その結果, 次のようなことがわかった。(1) 胞子の発芽および原糸体の生長は, 培養基のpHが5~8の範囲ではほとんど影響を受けないが, pHが5以下になると著しい阻害を受ける。
(2) 雨水中のCu2+, Zn2+, Mn2+などの重金属イオンは海塩 (NaCI) の共存下で胞子の発芽生長に対して相乗的又は相加的に阻害する。
(3) デポジットゲージにより1か月間採集した雨水を用いた試験の結果, 工業地域で採取した雨水は明らかに胞子の発芽生長を阻害する。
以上の結果から, 着生鮮苔類胞子の培養試験法による胞子発芽生長率は雨水中の大気汚染物質を評価する上での有効な指標であると考えられる。