大気汚染学会誌
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硝酸ナトリウムと亜硝酸ナトリウムエーロゾルのマウス暴露に関する実験的研究II
生体への影響
渡辺 弘村山 ヒサ子深瀬 治荒木 万嘉山本 匡利
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1983 年 18 巻 4 号 p. 308-319

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抄録

無機硝酸塩および亜硝酸塩エーロゾルの生体への影響を検討する目的で, マウスに9~37mg/m3NaNO3および11~24mg/m3 NaNO2エーロゾルを1日3時間, 5日 (短期暴露) または1日1時間, 1週5日, 2~4週 (長期暴露) 暴露し, 呼吸器および血液への影響を, ほぼ同濃度のNO2ガスおよびNaClエーロゾル暴露の影響と比較した。
結果は以下のとおりである。
1. 呼吸器の酵素組織化学的所見では, 気管および肺組織におけるacid phosphatase, alkaline phosphatase, およびlactate dehydrogenase活性度の増大および気管支粘膜下筋層のcholinesterase活性の低下がNO2暴露により認められた。これらの変化はNaNO3およびNaNO2暴露においても認められた。NaCl暴露では認められなかった。これらの変化は短期暴露においては濃度との対応関係が見られたが, 長期暴露においては期間の長さとの関係は明らかでなかった。
2. 病理組織学的所見では, NO2暴露において末梢細気管支を中心とする限局性炎症像が認められたが, NaNO3およびNaNO2暴露においては, 病理組織学的変化は明らかでなかった。
3. NaNO2短期暴露では, 肺の還元型グルタチオン量の増加および赤血球膜抵抗性が変化する場合があった。
4. 以上の結果から, NaNO3およびNaNO2エーロゾルは, NO2と類似の影響を及ぼすことが明らかとなった。このことは大気中窒素酸化物の人体影響を考える場合, 共存する硝酸塩および亜硝酸塩の影響に注目する必要のあることを示している.

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