大気汚染学会誌
Online ISSN : 2186-3695
Print ISSN : 0386-7064
ISSN-L : 0386-7064
パラロザニリン法による大気中のメチルエステル吸光光度定量の再検討
クリーンアナリシスへの指向
五十嵐 繁
著者情報
ジャーナル フリー

1983 年 18 巻 4 号 p. 370-373

詳細
抄録

メチルエステルは加水分解しメタノールになる。メタノールは酸化されてホルムアルデヒドになる。そのホルムアルデヒドをパラロザニリン法で吸光光度定量することによって, メチルエステル量を求める。
かって, 過マンガン酸カリウムによるメタノールからホルムアルデヒドへの酸化はプロピオソアルデヒドのようなアルデヒド化合物が共存することによって促進し, メタノール吸光光度定量の感度が増大することを見い出した。過剰の過マンガン酸カリウムは亜硫酸ナトリウムで還元し, 無色になる。テトラクロロ水銀酸ナトリウム (TCM) はその亜硫酸ナトリウムの安定剤に使用した。しかし水銀化合物を含有するTCM溶液は非常に有毒であり, プロピォンァルデヒドは悪臭をもたらす。分析化学は無公害分析法への傾向にあるので,(1) 亜硫酸ナトリウムは蒸留水にとかし (2) プロピオンアルデヒドの代りにアセトアルデヒドアンモニア ([CH3CH (NH2) OH] 3) を用いた。
パラロザニリン法によるメチルエステルの定量操作は次の方法を推奨する。2.8Mの硫酸2mlを添加することによって0.5Mの水酸化ナトリウム溶液 (メチルエステル20~300μg含有) 20mlを酸性化する。振りまぜ, 1%の過マンガン酸カリウム溶液1mlと0.3%のアセトアルデヒドアソモニア溶液1mlを加える。振りまぜ, その混液を室温で10分間放置する。1.2%亜硫酸ナトリウム水溶液2mlを加え過剰の酸化剤を還元する。振りまぜてからパラロザニリン溶液 (試薬0.16gを濃塩酸24mlに完全に溶解後100mlとする) と2.8M硫酸1mlを添加する。振りまぜてから室温で30分間放置する。同一操作で得られた空試験溶液を対照に, 波長585nmにおける吸光度を求める。検量線はメチルエステル20~300μg/20mlの範囲で直線性を示す。変動係数3.6%, モル吸光係数4.1×103mol-1・cm-1・dm3であった。0.5M NaOH溶液20mlが入っているミゼットイソピンジャー (バブラーの先端はガラスビーズが溶融付着してある) にメチルエステル蒸気を0.5l/minの速度で通気する。20分間又はそれ以上, そのエステルがメタノールに加水分解するまで, 室温に放置する。1時間通気すると, 大気中の濃度0.1ppmまで測定できる。

著者関連情報
© 大気環境学会
前の記事 次の記事
feedback
Top