大気汚染学会誌
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一酸化窒素吸入ラット血液中のヘモグロビン傷害の反応速度論
前田 信治昆 和典今泉 和彦志賀 健
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1984 年 19 巻 3 号 p. 239-246

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抄録
個体曝露チェンバーを用いて100PPmおよび200PPm一酸化窒素 (NO) に対するラット (Sprague-DawleySPF, 雄;体重320±10g) の急性曝露実験を行った。血中のNO化ヘモグロビン (且b-NO) およびメトヘモグロビン (MetHb) の時間推移を調べ, 簡略化した反応モデルにより計算機シミュレーションを行った。
(1) 個体曝露チェンバー (内容積, 約1400ml) を作製し, NOと02との気相反応を最小限にとどめ, チェンバー内でエーテル麻酔ができるよう工夫して実験した。(2) 血中Hb-NOおよびMetHb濃度は30~60分後に定常状態となり, MetHb量はHb-NO量の7~15倍であった。引き続き, 新鮮空気に曝露すると, 且b-NO, MetHbともに約20分の半減期で消失した。(3) Hb-NOおよびMetHbの時間的推移を計算機シミュレーションし, 各傷害段階の反応速度定数を半定量的 (多数の不明な過程があるため) に求め, NOのヘモグロビン傷害に及ぼす影響を議論した。(4) 本実験より次の結論を導いた。(i) NOの定常的吸入状態 (100PPm) で形成されるHb-NO量はかなり低値 (~0.4%) を維持する。(ii) MetHb量もMetHb還元酵素系が活性を維持する限りさほど上昇しない (<10%)。(iii) MctHb還元酵素活性は吸入気中のNO濃度に依存し, 高濃度のNO吸入は当酵素活性を抑制すると考えざるを得ない。
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