PLANT MORPHOLOGY
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特集 光によって拓く植物細胞内の真の構造機能
X 線結晶構造解析から捉えた受容体のペプチドリガンド認識機構
奥田 哲弘
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2022 年 34 巻 1 号 p. 29-36

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抄録

植物は,数多くの分泌性ペプチドや細胞膜受容体タンパク質を介した細胞間シグナル伝達を通じて,その発生,成長,生理を制御する.シロイヌナズナでは,1000 を超える遺伝子が分泌性ペプチドと推定され,受容体様キナーゼも約600 を数える.しかし,そのなかで受容体- リガンドの組み合わせが同定され,その分子作用機序が明らかにされているものは多くない.近年,X 線結晶構造解析を用いて,植物の受容体- リガンド複合体のタンパク質立体構造が複数決定されている.これにより,どのように受容体タンパク質がペプチドリガンドを結合するのかが分子レベルで明らかにされつつある.そして,Leucine-rich repeats (LRR) ドメインを細胞外領域にもつ受容体(LRR 受容体)が,低分子の直鎖状ペプチドリガンドを認識して細胞内へとシグナルを伝えるためには, LRR 受容体が,高度に保存されたペプチド認識モチーフを介してペプチドリガンドのC 末端と相互作用することが必須であると考えられてきた.しかし最近,GASSHO 1 (GSO1) 受容体と,そのリガンドとなるCasparian strip integrity factor 2 (CIF2) ペプチドの共結晶構造を明らかにしたことで,新たなペプチド認識様式が見出された.本稿では,X 線結晶構造解析を用いて明らかとなったLRR 受容体のペプチド認識とシグナル伝達の作用機序について紹介する.

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© 2022 日本植物形態学会
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